検査設備

当院で行うことができる検査について

心電図

心電図でわかる不整脈

心臓は『心筋』でできた血液を全身に送るポンプです。このポンプのリズミカルな動きをつかさどっているのは実は微弱な電気です。その微弱な電気は、正常な方では、洞結節という『発電』できる特殊な細胞が集まった右心房のある場所から、心筋にかすかな電気が流れて心筋を興奮させ、その結果、拍動が起こります。こうした心臓の電気的活動をみるのが心電図です。

心電図は両手足と胸に電極をつけ、そこから心臓で発生する微小な電気を取り出して記録する検査です。痛みを伴うことはありませんし、記録するのにそれほど長い時間はかかりません。

まず、心臓がリズミカルに動いているかどうか『調律=リズム』がわかります。心臓のリズムが乱れる『不整脈』の診断には欠かせません。「心筋梗塞」や「狭心症発作」のときには、心臓の筋肉(心筋)の電気的活動にも異常が生じるので、心電図では波形に異常が出てきます。さらに、なんらかの心臓疾患のために心筋に障害や負荷がかかっている場合も異常心電図が認められます。このように心電図は心臓の検査の中で最も基本的なものです。

時間をおいて何度も検査するにも理由があります。これらのリズムの異常や波形の変化は突然起こる場合もありますが、徐々に変化することもあります。病気によっては、毎回のように心電図検査を行う場合があります

運動負荷心電図とは

狭心症は『冠動脈』という、心筋を栄養する血管が、細くなったり詰まったりすることにより、心筋に十分な栄養を供給できなくなることで、胸が痛い、苦しいなどの症状をおこす疾患です。狭心症の患者さんはいつも心電図で異常がみられるのでなく、『心筋の酸欠』が起こった『狭心症発作』が起こって初めて心電図に異常が出てきますので、発作が起きていないときの心電図では、正常な人と区別がつきません。しかし、この発作は運動によって誘発されますから、運動後に心電図を記録して異常が認められれば、狭心症と診断されます。

運動負荷心電図は、運動をしてもらって測定する検査で、いろいろな方法があります。一番簡単なのはマスター法と呼ばれ、二段の階段を決められた時間、決められた速度で上がったり、下りたりして心臓に負担をかける方法です。簡便ですが、運動の負荷量が十分でないなどの欠点があります。この点を補う方法として、固定してある自転車をこぐ自転車エルゴメーターや、ベルトの上を歩くトレッドミルテストがあります。こちらは心臓にかける負担も大きくなり、狭心症の診断能力も高くなります。

当院では、転倒予防の観点から、エルゴメーターという自転車のようにペダルをこぐことで心臓に負荷をかける方法や歩行による負荷を利用して、運動負荷心電図検査を実施しています。胸痛が誘発されることがありますので、胸痛が誘発されたさいには、硝酸薬(ニトログリセリン)舌下投与を行う場合があります。より日常生活動作の中で狭心症発作時の特有の心電図変化も記録できます。心電図波形の変化に注目して行う場合には12誘導ホルター心電図といった、通常は2誘導のところ、より多くの誘導を確認することができる精度の高い機器を当院では使用することができます。

24時間記録できるホルター心電図

不整脈の中には終日続いているものもあれば、一日のうち数分だけ出るようなものもあります。心電図をとっているときに、たまたま不整脈が出れば診断がつくのですが、なかなかそういう機会には恵まれません。救急外来へ動悸を訴えて受診しても、動悸が収まってしまってなかなか診断がつかない、といったケースがときどきありますが、そうした一過性の不整脈を診断するには24時間中、心電図を記録するホルター心電図検査が最適です。この検査では胸にいくつかの電極を張り付け、そこから得られる心電図を小型の機械に記憶させます。

心電図データをカードに記憶させ、後日記録した心電図を解析します。ホルター心電図は体に張り付ける電極の数が少ないので、普通の心電図ほどの精度はありませんが、不整脈の診断には十分です。狭心症発作時の特有の心電図変化も記録できます。心電図波形の変化に注目して行う場合には12誘導ホルター心電図といった、精度の高い機器を当院では使用することができます。記録装置はベルトで腰回りにつけたり、肩からつるしたりして使いますので少し面倒です。しかし、一日の心電図を全部見ることができますから、不整脈の診療には欠かせない検査です。

心エコー

動きが見られる心臓超音波検査

心エコーは絶えず働いている心臓の動きを実際にみることができる検査です。超音波検査は、音波の中でも人間の耳には聞こえないくらいの高い周波数の超音波を利用しています。音波ですので、人体に無害で、痛みを伴うこともありません。魚群探知器は、超音波を海中に向かって発射し、魚にあたってはね返ってきた超音波を受信することによって魚がどれくらいの深さにいるかをキャッチします。心臓でも同じように、胸の上にあてた探触子(プローブ)と呼ばれる小型の装置から超音波を出し、心筋や弁(心臓内の部屋と部屋の間にある逆流防止弁)にあたってはね返ってきた超音波を受信することで、それらの場所を知ることができ、さらに、動いている心臓の像をつくることもできるのです。血球に当たり、はね返ってきた超音波で、血液の流れる速度を測定することができます。また、流れる速度や方向に応じて色分けして表示することもできます。この方法をカラードプラ法といいます。

この検査は大変習熟を要する検査のため、エコー検査の経験が豊富な検査技師に行っていただいています。

超音波検査でわかること

(1)心臓の大きさ、形、心臓の壁の厚さ、動き方がわかる

心臓病の中には心臓のサイズが大きくなる場合、小さい場合などいろいろありますが、一般的には心臓が弱っている場合、心臓の動きを代償するために心臓が拡大することで補おうとします。そのため、大きさを評価することが重要です。また、心臓が弱ってくると、心臓の形もしだいにボールのように丸くなってくることも知られています。また、拡大だけでなく、心臓の壁の厚さを調べることで、心肥大があるかどうかもわかるのです。

心臓の動き方が調べられるのも大切な点で、心筋梗塞の場合は梗塞が起こり、収縮運動をしない心筋の場所や範囲がわかります。さらに心臓全体の機能の良しあしも数字で客観的に評価することができます。

(2)血液の流れる速度、方向もわかる

血液の流れる速度や方向は、弁疾患の診断になくてはならない情報です。血液が一方向に流れるように部屋と部屋の間に四つの弁がついているのですが、もし弁がうまく機能しなくなって血流が逆流する場合は「弁逆流」、弁が開きにくくなって血液がスムーズに流れなくなったときは 「弁狭窄」と診断します。このように弁がうまく機能しない病気を 「弁膜症」と呼んでいます。

超音波検査では血液の流れる速度や方向がわかりますから、弁逆流の場合は、弁のところで逆向きに流れる血流を検出することによって診断がつきます。弁狭窄のときは、開きにくくなった弁のところで加速され、速くなった血液の速度を測ることによって診断できます。こうした弁疾患の重症度も評価することが可能です。

さらに、心房中隔欠損症や心室中隔欠損症などのように、生まれつき心臓の壁に孔があいているような病気(先天性心疾患)の場合も、そこを通る異常な血流を検出することによって診断できます。

血管伸展性検査

動脈硬化は加齢そのもの

若い人からご年配の方も増える動脈硬化性疾患

近年、ライフスタイルの変化に伴って、生活習慣病、メタボリックシンドロームの急激な増加が社会問題にもなっています。

特によく耳にする疾患は

  • 高血圧症 :3100万人
  • 糖尿病  :1620万人(予備軍を含む)
  • 脂質異常症:3000万人

健康な高齢者をふやすことは個人の生活の質向上という観点からはもちろん、ご家族や社会にとっても医療費の効率的活用をすることが重要な課題になっています。その観点から、万病のもとであるこれらの生活習慣病やメタボリックシンドロームにならないようにする予防(一次予防)や、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患を再発させないようにする(二次予防)ことが重要です。

当院では、下記の様な指標の検査も定期的に実施し、病気が進んでいないか、チェックすることをお勧めしています。生活習慣病やメタボリックシンドロームは、長く付き合っている病気です。そのため、いつも注意していくことがかえって難しいかもしれません。治療のモチベーションアップのためにも、ぜひ血圧手帳で毎日の血圧チェックを、血液検査でコレステロールや中性脂肪、血糖値のチェックを行うだけでなく、現状の自分の状態を『見える化』しましょう。

メタボリックシンドロームの判定基準

動脈硬化を予防するためには、高血圧症や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病がリスク因子ですので、これらの予防・治療が重要です。

  • ウエスト:男性 85cm、女性 90㎝ 以上 に加えて
  • 以下の2項目以上に該当
    1. 血圧  :収縮期血圧 130mmHg 以上、または拡張期血圧 85mmHg 以上
    2. 脂質  :HDL-コレステロール(善玉コレステロール) 40㎎/dl 未満、または 中性脂肪 150mg/dl 以上
    3. 血糖  :空腹時血糖値 110mg/dl 以上
現状の把握と今後の方針を考えるために
  • 動脈の硬さの指標(CAVI)と血管の狭窄・閉塞の判断指標(ABI)は血圧に依存することなく動脈硬化の程度を判断するための指標です。
  • 1つ1つの疾患が軽度、または発症していなくとも、それらが重複すると心血管疾患のリスクが著明に上昇することも言われています。
  • 血圧とは独立した動脈硬化そのものを診断・評価することも、予防を効率よく行うために重要だと考えられます。
    臨床的有用性
    ■治療や生活習慣是正の動機付けに役立つ
    ■動脈硬化に対するリスクファクターの影響を定量的に判定できる
    ■薬剤の治療効果を明確に評価できる
CAVI:Cardio Ankle Vascular Index

CAVI(キャビィ)は、心臓から全身に血液を送りだす最初の血管(=大動脈)を含む「心臓(Cardio)から足首(Ankle)まで」の動脈(Vascular)の硬さを反映する指標(Index)で、動脈硬化が進行するほど高くなります。大動脈の柔軟性の低下は心疾患の発症や予後を規定する因子となることが知られており、早期診断と管理に役立ちます。CAVIは血圧に依存されない血管固有の硬さを表すことが特徴です。

CAVI基準値

ABI:Ankle Brachial Pressure Index

ABIは、脚の動脈が狭くなっているか(=狭窄)・詰まって血液が流れていないか(=閉塞)を評価する指標です。上腕と足首の血圧から算出します。ABIは痛みをともなわず、針などを刺すこともない非侵襲的な検査で数値として評価できるので、末梢動脈疾患の患者さん早期発見に有用です。歩くときに足がだるくなる、痛みがある、足先が冷たくなる、足がつるなどの症状がある方はご相談ください。また、末梢動脈疾患は、心血管疾患や脳血管疾患など他臓器障害との合併が多く見られることからも、早期発見が重要です。

ABI基準値

 

方法

測定方法は比較的簡単で、痛みや負担が少ないのが特徴です。

ベッドで仰臥位になっていただき、血圧を測定するためのカフを上下肢にそれぞれ巻きます。心電図記録や心音マイクを装着し測定が行われます。いわゆる血管年齢として表現することのできる簡易レポートをお渡しすることも可能です。動脈硬化と一口に言っても見えない部分の変化です。血管年齢として意識することで、今後の生活習慣病管理に役立つ目安になると良いと考えます。

(図:当院で使用する機器)

検体検査

血球算定

血液中の細胞成分である赤血球、白血球、血小板数を測定します。比較的短時間で検査結果が確認できます。
赤血球、白血球、血小板の数や大きさ、ヘモグロビン濃度などを測定することで 全身状態を把握する検査です。貧血や白血病など血液疾患の病態解析、診断、 治療効果判定、治療経過観察に用いられています。

生化学検査

生化学検査とは、血清中の物質を化学的に分析し、病気の診断や治療の判定、病状の経過観察に欠かせない検査です。血液は代謝のために全身のあらゆる組織を循環し細胞に栄養分を運ぶと同時に、老廃物を受け取っています。そのため、常に全身の健康状態を反映しています。血清中には体の内部の環境を整える働きがあり、蛋白や糖をはじめ、様々な酵素など、生命活動を維持するのに欠かせない物質が含まれています。血清はそれらの成分を全身に運んだり、不要物を持ち去ったりし、血液の中でそれらが常に一定に保たれるようにコントロールしています。
生化学検査では、調べる臓器によって検査項目が違ってきます。電解質、酵素、蛋白、糖、脂質などの各種生化学成分を分析測定します。各種臓器の疾病診断やメタボリックシンドロームなどの発見、治療中の評価に使用します。

院内でも日常的に必要な肝機能・腎機能・脂質(中性脂肪・コレステロール値)などの測定ができる機器を導入しています。また、項目によっては外部の検査機関に依頼します。

尿検査・便検査

尿や便は手軽に採取でき、多くの情報を持っているので有用です。尿とは、血液によって全身の組織から運ばれてきた体の中の不要な成分が、余分な水分とともに排出されたもの。異常があると、不要な成分が排出されなかったり、排出されてはいけないものが尿にまじったりします。このような体の異常を探るために、尿の性質や成分を調べるのが尿検査です。尿検査は、試験紙で蛋白・糖・潜血などが短時間で結果を知ることができ初期診療に役立ちます。また、便検査は、出血性消化器疾患やヘリコバクターピロリ感染症の診断等に役立ちます。