睡眠時無呼吸症候群

家族の気になる『いびき』について

本人は気が付いていないけれど、寝室をともにしていたり、寝ているところをみたときに気になる『いびき』ですが、近年重大な疾患の危険性が高くなることが知られています。そのまま放置せずに、原因を調べて、改善することが肝要です。

『いびき』の主な原因は

  1. 単純性いびき症
  2. 上気道抵抗症候群
  3. 睡眠時無呼吸症候群

と大別されています。

1.単純性いびき症

主な原因として、ストレス、疲労、飲酒、感冒、花粉症などで、軟口蓋が原因となる振動型で、規則的かつ低音のいびきが特徴です。一時的な原因であることが多いため、生活習慣の改善が大切です。ただ、なかなかこれと区別することが難しい病態として、

2.上気道抵抗症候群

3.睡眠時無呼吸症候群

睡眠中の上気道の抵抗が強く、眠りの質が低下する睡眠障害の一種が上気道抵抗症候群です。睡眠時無呼吸症候群は、不規則ないびきが認められ、無呼吸・低呼吸による呼吸停止後に大きないびきをかくのが特徴です。いびきをかいていないにも拘わらず、睡眠時無呼吸症候群であることもあり、ご家族から途中で息が止まっている、などといわれて受診される方も増えています。

これらの状態は身体に重大な問題が生じていたり、今後、高血圧症や心不全、脳卒中、心房細動などの不整脈を発症する危険性が高くなることが知られています。

  • 習慣的ないびき
  • 日中に眠気がある
  • 熟睡した感じがない
  • 疲れやすい

などの症状がありますので、気になる方やご家族にいらっしゃった際には検査をお勧めします。閉塞型睡眠時無呼吸と上気道抵抗症候群の違いは、簡易検査でも測定が可能な、無呼吸低呼吸指数(AHI)が上気道抵抗症候群では5未満です。また、比較的睡眠中の血中酸素飽和度の低下が軽微であることが特徴です。

 

睡眠時無呼吸症候群と心疾患などの関連は強い

  • 高血圧症の患者さんのうち、何か原因疾患があって高血圧症をおこしている方を『二次性高血圧症』といいます。中でも睡眠時無呼吸症候群が原因の一つであり、『治療抵抗性高血圧症』や『夜間早朝高血圧症』では閉塞性睡眠時無呼吸症候群に注意が必要です
  • 持続陽圧呼吸(CPAP)治療によって血圧が低下し、減量や降圧薬の上乗せに降圧効果が期待できます
  • 睡眠時無呼吸症候群は心不全の発症と増悪に関与するが、一方で心不全によって睡眠時無呼吸症候群は悪化し、双方向の関連があることが知られています
  • 2型糖尿病発症の危険因子になる可能性が高いことが報告されています

(睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020より引用)

  • 心房細動患者さんを対象にした研究では、睡眠時無呼吸症候群を有する心房細動患者さんに対して行われた「電気的除細動」後の再発や「カテーテルアブレーション」による治療後の成績向上が示唆されています。

(JAMA Cardiol. 2018 Jun 1;3(6):532-540. doi: 10.1001/jamacardio.2018.0095.)

 

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群を疑ったら・・・

自覚症状は客観的に測定する検査に比べて信頼度が劣ることが知られています。すなわち、症状がないからといって、睡眠時無呼吸症候群を除外することはできないのです。

現在、簡易モニターが自宅で比較的簡単に測定することができるため、スクリーニング(初期の診断)として、実施しています。この検査は当院でも使用できます。また、検査の装着について、やや煩雑なこともありますが、精密検査を行うこともできます。こちらは、簡易検査で必要と判断した場合に実施することがあります。

 

Philips社製睡眠評価装置 ウォッチパット

 

 

当院では、他院で治療中の患者さんが転居などの際に、治療を引き継ぐことも可能です。その際は、どこのメーカーの何という機種かを確認の上で、ご相談があれば診療時間中にお電話をいただければご案内します。

 

睡眠時無呼吸症候群は探して、積極的に治療しましょう

睡眠時無呼吸症候群は自分では、気づきにくい疾患です。にも拘らず、重大な疾患の原因になったり、増悪させる因子になったり、放置してしまっていることは危険です。また、マウスピースなどの治療を行っていても治療効果を確認していないことがないようにしましょう。

  • セルフチェックに当てはまる方

  • 降圧薬を複数使用している方
  • 肥満などのメタボリックシンドロームがないにもかかわらず、血圧が高い方
  • 食事や運動を注意してもメタボリックシンドロームや糖尿病が改善されにくい方
  • 肥満になりやすい方
  • 心房細動などの不整脈を指摘、治療中、カテーテルアブレーションを受けられた方 など

周りの人が気が付いてあげることで、気が付く場合もあります。自分だけでなくご家族にも、気にかけてあげてください。

 

睡眠時無呼吸症候群の検査は自宅で可能です

睡眠時無呼吸症候群の検査は自宅で可能です。

① 簡易検査(脳波を用いない検査方法)実施により RDI(呼吸障害指数:記録1時間あたりの無呼吸と低呼吸の数の和)を算出
正常範囲:RDIが5未満
軽度 :RDIが5以上19.9以下
中等度 :RDIが20以上39.9以下
重度 :RDIが40以上

② 重症であればCPAP療法をはじめとして治療介入

③ 中等症や症状のから疑われる軽症であれば精密検査(PSG)を実施 AHI(無呼吸低呼吸指数)が20以上でCPAP療法