循環器内科 検診や健康診断

心電図異常

心電図異常を指摘されたら

健康診断で心電図は ①採用時の企業健診、②職場の定期健診(40歳以上)、③人間ドックで必ず行われます。心電図は侵襲がない(安全で痛みがない)、安価、どこでも誰でもできる一般的な検査です。もし心疾患を疑った際に、過去に記録した心電図と比較することはとても有用です。心電図検査では、必ずしも心疾患では無いかもしれないが、心疾患やその他の心臓に影響を与える疾患が隠れているかも知れない、ということがわかります。

  • 期外収縮
    期外収縮が出ている場合、不整脈に関連する症状があるか、不整脈による合併症が発生する可能性があるため、チェックが必要なことがあります。
    心房期外収縮は心房から、心室期外収縮は心室から、それぞれ通常とは異なる場所から電気刺激が発生している状態です。発生部位は心電図波形によりおおよそ推定が可能です。
    不整脈は出ている時に心電図を記録することでのみ診断が可能です。できる限り長時間連続的に心電図を記録することができる24時間ホルター心電図やイベントレコーダーを行ったり、運動したさいに動悸がある場合には、運動負荷心電図であえて不整脈が起きやすい状態を作ることで診断することができます。
  • 脚ブロック(右脚ブロック・左脚ブロック)
    心臓は正常な状態ではトクトクと一定の間隔で収縮・拡張を繰り返す心筋でできたポンプです。定期的にトクトクという収縮を起こすために、心臓は洞結節で微弱な電気刺激を発生させ、心房(右房・左房)を収縮させます。電気刺激は、右房にある房室結節に伝わると、ごくわずかな伝導遅延を起こします。それからヒス束→右脚及び左脚→プルキンエ線維という伝導路を通り心室筋を収縮させます。右脚ブロックは右室を収縮させる伝導路が遅れて興奮する状態、左脚ブロックは左室が遅れて興奮する状態です。右脚ブロックは健康な人にも認められる場合があり、大きな問題になることはほとんどありませんが、左脚ブロックは重要な心疾患が隠れている可能性があるため、チェックが必要なことがあります。
  • ST-T異常、陰性T波、ST低下など
    高血圧や脂質異常症、糖尿病などの動脈硬化疾患に伴い、左室肥大をきたすとこれらの心電図変化をきたすことがあります。また、動脈硬化による心臓弁膜症で心拡大、心肥大をきたした際にも同様の変化が出ることがあります。
    一方、冠動脈(=心臓の筋肉に血流を送っている動脈)に狭窄があると、病変より末梢に血流がとどこおるため虚血を起こします。これを虚血性心疾患といい、代表的な疾患が狭心症や心筋梗塞です。心筋梗塞や狭心症はこのような心電図変化をきたす代表的な疾患であり、決して見落としてはならない変化です。
  • 心房細動
    心房細動とは、不整脈の一種です。心臓内にある「心房」がけいれんのような異常な動きをし、心臓本来の収縮きができなくなる病気で手首で脈をとると規則性のない乱れたバラバラの脈になります。心房細動は加齢に伴って発生率が高くなり、女性よりも男性に多い不整脈です。日本では70万人以上が心房細動に罹患しているといわれています。特に、心臓病や高血圧、慢性の肺疾患、甲状腺機能亢進症のある人に多くみられますが、心臓に病気のない人でも精神的ストレスや睡眠不足、アルコールやカフェインの摂りすぎ、不規則な生活などが原因となって引き起こされます。心房細動は持続期間により以下のように分類されます。

    1. 発作性心房細動:1週間以内に停止する
    2. 持続性心房細動:1週間以上持続する(薬を使ったり、電気ショックをかけないと停止しない)
    3. 長期持続性心房細動:1年以上持続する
    ※最初は発作性で始まり、やがて薬を飲んでも正常の脈に戻らない持続性になる、進行性の疾患です

    患者さんによって症状の程度はさまざまで、無症状の人もいます。「ドキドキする」「胸が苦しい」「階段や坂を上るのがきつい」「息が切れやすい」「疲れやすい」などの訴えが多く、手首や頸部(首)の脈をとると、「速くなったり、飛んだり」を不規則に、間隔がバラバラの脈になります。過労やストレスが原因で引き起こされたり、アルコールを飲んだ後に起こることも少なくありません。一方で前述のとおり無症状の方もいます。心房細動自体は、動悸などの症状の有無にかかわらず、致死的な病気ではありませんが、以下のようなリスクが伴います。

    ・「動悸」「息切れ」「疲れやすい」などの症状が強い人は日常生活に支障が出る
    ・心臓の機能が低下して心不全を引き起こすことがある
    ・心房内で血液がよどむために血栓(血液のかたまり)ができて脳梗塞を引き起こすことがある。特に心不全・高血圧症・糖尿病・75歳以上の人、過去に脳梗塞を起こしたことのある人が発症しやすいので、薬による予防が必要

    心房細動を指摘された際には、必ず専門医への受診をしましょう。

-循環器内科, 検診や健康診断