総合内科・プライマリケア 高血圧症

慢性腎臓病患者さんの血圧管理について

慢性腎臓病について

特定検診や健康診断でしばしば蛋白尿だったり、腎機能が低下しているなどのことが指摘されます。慢性腎臓病は①尿検査の異常、画像診断、血液検査、病理検査で腎障害が認められていること、②血清クレアチニン、年齢、性別で推算されるeGFR < 60ml/min/1.73m2、①と②のいずれか、または両方が3ヶ月以上持続する状態を指します。

原疾患 蛋白尿区分 A1 A2 A3
糖尿病 尿アルブミン定量(mg/day)
尿アルブミン/Cr比(mg/gCr)
正常 微量アルブミン尿 顕性アルブミン尿
30未満 3〜299 300以上
高血圧症
腎炎
多発嚢胞腎
腎移植
不明
その他
尿蛋白定量(g/day)
尿蛋白/Cr比(g/gCr)
正常 軽度蛋白尿 高度蛋白尿
0.15未満 0.15〜0.49 0.50以上
GFR区分 G1 正常または高値 90以上 低リスク 中リスク 中高リスク
G2 正常または軽度低下 60〜89 低リスク 中リスク 中高リスク
G3a 軽度〜中等度低下 45〜59 中リスク 中高リスク 高リスク
G3b 中等度〜高度低下 30〜44 中高リスク 高リスク 高リスク
G4 高度低下 15〜29 高リスク 高リスク 高リスク
G5 末期腎不全 <15 高リスク 高リスク 高リスク

慢性腎臓病患者の血圧と脂質の治療目標と注意点

降圧管理

まず2つのストーリーが提唱されています

① type 2

慢性心不全 →心拍出量の低下・血管内皮機能不全・中心静脈圧の上昇
→動脈硬化の進行                   →腎血流、糸球体濾過率の低下 →慢性腎臓病
→心不全管理に必要な薬剤(利尿剤やACE阻害薬)     腎虚血と繊維化

② type 4

慢性腎臓病 →レニンアンギオテンシンアルドステロン系の活性化 →血管収縮、水・ナトリウムの貯留 →心機能低下 →慢性心不全
→尿毒症物質、電解質異常                               左室肥大
→貧血                                        心筋の変性

 

以上を踏まえて、慢性腎臓病患者さんの血圧管理は

<75歳 ≧75歳
CKDステージ 糖尿病なし・蛋白尿なし 目標<140/90mmHg 目標<150/90mmHg
G1~G3 ACEI, ARB, CCB, サイアザイドから選択 75歳未満と同様
G4,5 ACEI, ARB, CCB,長時間作用型ループ利尿薬から選択 CCB
糖尿病あり/なし、蛋白尿あり 目標<130/80mmHg 目標<150/90mmHg
G1~G3 第一選択薬 ACEI, ARB 75歳未満と同様
第二選択薬(併用薬) CCB, サイアザイド 75歳未満と同様
G4,5 第一選択薬 ACEI, ARB CCB
第二選択薬(併用薬) CCB, 長時間作用型ループ利尿薬

75歳未満ではCKDステージを問わず糖尿病と蛋白尿の有無で高圧基準を定めた
蛋白尿はA2以上をありと定義
75歳以上では、起立性低血圧や急性腎障害などの有害事象がなければ<140/90mmHgを目指す

脂質異常

慢性腎臓病患者さんの脂質代謝改善は、CKDG3レベルでは予後に影響があるとの報告が見られます。
冠動脈疾患のリスクに慢性腎臓病があり、一次予防(まだ心臓病を発症していない人に向けての予防)はLDL-C <120mg/dL、二次予防(心臓病がすでに併存している方に向けて繰り返さないように予防)はLDL-C <100mg/dLとされています。
スタチンや小腸コレステロールトランスポーター阻害薬だけでは管理が困難な症例では、腎機能低下がある場合、特にフィブラートやPPARαモジュレーターは特に慎重に投与する必要があります。

 

※ この内容は日本内科学会誌111巻3号P.526-531の内容を参考にいたしました。

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